建設技術展2024近畿

たくさんのご来場ありがとうございました。

展示テーマ

今回の展示テーマは場所打ち杭鉄筋のバランスです。   場所打ち杭の鉄筋かごは地表に近い上部(杭頭)が地震の影響を強く受けるので太径鉄筋が密集していますが、中間部分から下は杭頭部ほどの影響を受けないために鉄筋が細く本数が少ない傾向があります。     これは通常の構造物ではあり得ないもので、他に類例をみない特殊なものです。  展示ブースでは鉄筋かごが座屈した写真の上に東京タワーを逆さにして載せましたが、こうして考えると大変奇妙なことです。

アタマでっかち尻すぼみの影響

アタマでっかち配筋は完成した杭の性能からすると、理に適っています。  しかし、施工においては大問題であり、担当の出先機関やゼネコン・杭業者・末端作業員まで大変苦労をしているのが実情です。   しかし不思議な事に、杭は出来て当たり前といった業界常識によって施工の難易度は理解されず、鉄筋かご座屈という再発事故と呼べるものが表面化していません。   配筋バランスの悪さを当たり前に意識してもらうべく、杭頭鉄筋のモックアップを展示しました。

   杭頭筋の一部モックアップ 主筋径D38×20本 帯筋D22@150/300       金具は様々なタイプを取付

モックアップの背面には、杭頭鉄筋径だけをD22~D38に変えたできるだけ単純な比較をグラフにして展示しました。    この比較のD38杭の杭頭筋の一部として、モックアップは実際に近い鉄筋ボリュームを表しています。          (図上部左の朱囲い部分)

座屈計算式の前提条件をクリアした完璧な施工をしても座屈は起こります。    つまり施工ミスではありませんので、何らかの評価による対策が必要です。

https://muyousetu.com/wp-content/uploads/2024/11/パネル展示5座屈危険性の調査例-B-scaled.jpg

展示ブースで聞かれた質問や意見等

鉄筋モックアップ設置により、多くの方の興味をひき、国や自治体関係者や設計、ゼネコン、資器材メーカーの方々がこれまでより多く来られました。   杭の図面ではなく実際の杭頭部分の一部を見ることにより、アンバランスを実感したという声が多くきかれました。   連結部については図にあるように一般的な重ね接手ですが、機械式接手が無溶接工法と思われる方も一定数いて、無溶接工法自体の説明不足を感じました。

モックアップの最上段リングの金物はUボルトですが、異形鉄筋の節の高さが揃わない事について指摘がありました。  

ある自治体関係者は、正にこの展示内容で触れている鉄筋かご座屈や鉄筋重量について、深刻に心配をされていました。   このように、無溶接工法に絡む問題は、関係者悩ませますが、担当者以外はイメージしにくいものであり、様々な方面が絡む問題であり責任重大なため、個人にかかる負担は過大です。    十分な準備がされないままの事故は、単なる過失ではなく犯罪的な重過失になるため、関係者は大変です。    

さまざまな立場の意見交換が可能な勉強会の必要性

無溶接工法は金具だけでなく、施工(使用法)や管理や工程に大きく影響し、重量杭などでは構造筋の設計に影響が及ぶ場合もあり、責任・権限・協議のタイミング・取扱い・不足しているルールなど、課題山積状態です。   これらはローテク故に地味で話題にならず、常識という尺度で漠然と扱われるために、個別の立場で掘り下げると責任と権限から扱いきれなくなり難しいものですが、徹底した課題整理をすれば解決可能なものばかりです。   無溶接工法安全協会の展示内容は毎回問題提議ですが、今後は様々な立場で集まる勉強会を通じて、問題の表面化と対策研究をしたいと考えています。

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