無溶接工法のカテゴリー

技術的課題だけが無溶接工法の課題ではありません

無溶接工法施工では、「もつ・もたない」(≒施工完了までに変形や脱落をせずに無事持ちこたえるかという意味)という言葉が、難易度が高い工事ほど延々と繰り返されます。     全く科学的でなく、他産業ではびっくりされるのではないでしょうか。    

しかし、施工関係者の立場では出来得る限りのもので対応するしかありません。   責任施工でありながら施工の枠組みを超えて、無溶接工法の技術以外の事について言ってもはじまらず、工事に点数をつけられる立場でもあり、建設業界の構造的問題には触れることができません。

無溶接工法というカテゴリーはありません

Uボルトや無溶接金具を使用した施工は全て無溶接工法とされ、施工者の責任施工であり、無溶接工法カテゴリーはありません。   溶接の代替固定法と考えれば「無溶接工法は施工に含まれる」と考えるのは自然です。   無溶接金具固定の弱点を意識せず、溶接固定の代替固定法と捉えれば、なんら問題はなく、これまで様々な個々の問題が表面化しなかったために、溶接の代替固定で定着したものと思います。   しかし、「無溶接工法」ページで挙げたように、無溶接金具固定は溶接と同様に扱えず、溶接の代替固定にならない別ものです。   

無溶接工法における権限と責任が明確でなければ、「誰も責任を取らない施工」か「誰かに責任を押し付ける施工」になります。   このような状況で起こる重大事故では工事関係者が恣意的無為無策として断罪されても仕方がありませんが、関係者でどうにもならない無溶接工法の枠組みが根底にある限り根本的な対策は出来ず事故を防ぐことはできません。   安全性だけでなく、無溶接工法に関するコストや工期にも影響し、関係者にしわ寄せします。

無溶接工法は、施工者範疇に含まれていた補強リングも含まれます。   (金具固定だけで完結しない)に、これまでになかった独自のカテゴリーが必要になります。   

保険からみた無溶接工法

無溶接工法が保険加入をできるのかを考えてみます。   保険の尺度で眺めてみると問題がハッキリすると思います。

現行の無溶接工法の取扱いはあくまで資材のひとつ(金具)です。   そのために金具メーカーはPL保険(生産物賠償責任保険)には入れますが、工事保険には加入できません。   あたり前ですが施工者ではないために、施工体制台帳に載らないからです。

PL保険は、第三者に引き渡した物や製品、(生産者の範疇の)業務の結果、に起因して賠償責任を負担した場合の損害を、身体障害または財物損壊が生じることを条件としてカバーする賠償責任保険です。   無溶接金具(無溶接特殊金物やUボルト)の適切でない使い方(たとえば、金具や補強リングの安全率を含む不完全な検討、または検討結果と異なる補強リング部材使用や不適切な取付・位置により金具の許容支持力を超えるような使用)には適用されません。   これらは、メーカーの手を離れた後の、施工に近い段階や施工中に原因があり、製造者責任とはなんの関係もないからです。   

そもそも弱い固定力しかなく標準試験やルールの定めがない無溶接金具固定が原因の事故では、不測かつ突発的な事故に該当しないと思われるため、工事保険の保証対象外になる可能性が高いと思います。   

賠償責任保険(Wikipedia)

PL保険(2022年12月16日 (金) 11:25Wikipedia)

無溶接工法カテゴリーの必要性

「無溶接金具固定」で詳しく書きますが、そもそも無溶接工法の根幹を成す「弱く・一体化せず・ずれる・不安定な固定」は、施工者責任の範疇ではありません。

この問題の恐ろしいところは、関係者が恣意的無為無策として、重過失で刑事責任を問われる可能性があることです。   直接現場に関わる者は立場に関係なく、これまで書いたような諸々の不備や未解明部分が多い(無溶接金具固定)を含めて、異なる立場や権限下で起こった事故についても、理不尽な責任を負う羽目になりかねません。   この理不尽さを避けるためには、各工程や作業・権限/責任範囲の明確化と無溶接工法カテゴリーの設定が避けられないと思います。   カテゴリーを新設すれば、作業と管理の標準化と権限/責任の明確化が可能になります。

無溶接工法と無溶接金具の混同が多い現状では、無溶接金具を支持力の検討なしに選んだり、数量指定で無溶接金具を売買し、配筋に変更が生じても鉄筋径に変更がなければそのまま使用したりといったことが数多く見受けられます。   

無溶接工法が始まった当初と比べて施工の難易度が大きく上昇している現在では、メーカー発行の承認願に座屈検討などを入れているところが多く、時として発注者からも求められますが、施工者範疇との境界が極めて曖昧で、各地方や現場により取り扱いがバラバラの状態です。 

たとえば再発事故の性質が極めてつよい座屈事故は、その原因究明と対策を講じて工事を再開するにあたり、ノウハウを持つメーカーの協議参加は求められません。   不適切な対策で工事再開し、再発事故の危険性を高めてしまった事例もあります。   構造的な問題といえますが、重大事故その他のトラブルの際に、「施工者責任」で責任を負い、保険のカバーが効かない、場合により重過失で刑事責任を問われる・・・   理不尽極まりない状態を繰り返さないために、別個のカテゴリーが必要といえます。  

   

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