鉄筋かご座屈

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場所打ち杭鉄筋かごの座屈について

座屈した鉄筋かご

場所打ち杭オールケーシング工法の施工中に、鉄筋かご重量や杭底の不陸、ケーシング揺動・全周回転、ケーシング引抜に伴うコンクリート沈下等により起こります。

コンクリート打設時にはケーシング引抜/切り離しをします。 鉄筋かごを吊るワイヤーロープがケーシング内部を貫通しているために鉄筋かごの自立状態が避けられず、座屈リスクが発生します。

座屈した主筋は、外側の帯筋と内側の補強リングにより抵抗が少ない円周方向に倒れます。 少なくとも補強リング間隔の1スパン以上が座屈をするため、回転を伴い数メートル沈下します。

座屈事故は、死傷事故を伴わずとも数カ月以上の工期大幅遅延を来すものですが、表面化していません・・・

鉄筋かご座屈の説明動画

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鉄筋かご座屈が表面化しない理由と対策

鉄筋かご座屈は施工ミスでしょうか?

鉄筋かご座屈は施工ミスとされています。  それ故に座屈の噂が拡散するだけで、再発事故の性質が強いにもかかわらず情報共有が全く進んでいません。  

責任施工で、座屈は施工ミスとされるところから、長尺杭や重量杭で最も心配しなくてはならない座屈対策が技術提案に盛り込まれない・施工の難易度とコストが請負費に全く反映されない状況にあります。  杭頭配筋の太径過密化や長大化により、施工の難易度が急激に高まっていますが、座屈問題が表面化しなければ改善は見込めません

2012年以降の1000件近くを調査した結果

《施工ミスとは限らない

実現不可能な理想的条件(①圧縮荷重は鉄筋重量 ②主筋は鉛直 ③鉄筋重量は均等分散:つまり施工の影響がない鉛直自立状態)において鉄筋自重と弾性座屈荷重の比を調べ、1000件のうち座屈危険度の高い100例を一覧にしたものです。 

●単位面積当たり鉄筋自重 A=構造筋重量÷(脚部主筋断面積×本数)

●弾性座屈荷重 B=(π²×25000×π×D⁴/64)/Lk² ・・・D=脚部主筋公称直径、Lk=支点間距離×境界条件係数=補強リング間隔×(両端ピン=1.0、両端固定=0.5)金具留めは通常両端ピンと見なす

●安全率 下表では安全率を1.0として比較  (荷重均等分散・鉛直状態・・・設計状態のみで座屈が起こり得るかどうかを検証:実施工では不確定要素をカバーする安全率が必要)

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上表約100件のうちA/B(単位面積当たり自重/弾性座屈荷重)の値70~80%未満が10件 80~90%未満が19件 90~100%未満が13件(ほぼ100%も含む) 超過する状態が45件 超過すれば座屈を起こしますが、実際には施工者が(経験値により)苦心し増設分を自社負担(補強リング調整や金具)で施工するので、全てが座屈を起こしているわけではありません。 しかし鉄筋重量が3t程度の通常「軽い」とされる鉄筋や杭長25m程度でも座屈危険度が高いものがあり、常に座屈対策は必要です。

座屈危険度可視化の必要性

部材同士が溶け込み一体化する溶接工法の時代では、杭頭部主筋径D32程度・杭長30m以下の杭が多く、施工者の経験値で対応できましたが、その経験が今では通用しなくなっています。  無溶接金具固定のなかにはねじれ防止や両端を固定に近い状態にするものもあり効果的ですが、曲げモーメントが小さい脚部の主筋径を座屈対策のために太く変更するなどの根本的対策が必要なものもあります。  そのためには座屈危険度を数値化して可視化を図ることが必要です。 勘頼り対策は効果に大きな過不足を生じるだけでなく、根拠に欠けた施工は、他産業には見当たらないものです。

鉄筋かごの座屈計算と問題点 

鉄筋かご座屈は、杭全長に対してイメージしてしまいがちですが、座屈は補強リング間で起こります。 また圧縮荷重と主筋細長比によるため杭全長に渡り注意が必要です。 

鉄筋かごが理想的な状態(①主筋が鉛直 ②荷重均等負担)で、主筋が負担する圧縮荷重が弾性座屈荷重未満であれば座屈しません。  オイラー式 Pcr=π2×E×I/Lk2 で弾性座屈荷重を求めます。  しかし下記のような問題点があり、単純計算は成り立ちません。

①鉄筋かごの状態は、ケーシング内面にスペーサーが接触して傾いているため鉛直でない

②杭底を水平に施工することは極めて困難なため荷重は均等分散せず偏る(右座屈写真でも確認できる)

③圧縮荷重には鉄筋自重の他、ケーシング引抜時のコンクリート沈下に伴う影響があるが、沈下量は地盤条件により大きく異なる

④鉄筋かごはスペーサーを介してケーシングの揺動・全周回転・上下動の影響を受ける

現場における鉄筋かご座屈と鉄筋下がりの区別と影響

完成した杭のアンカー部主筋が所定の高さまでない場合には鉄筋かご座屈を疑われることが多く、確認する方法がないために、座屈とされるケースがあります。  鉄筋下がり自体は、番線結束か金具留めで連結部を支持できるか検討することで防げることから施工ミスに分類されるものと思われますが、鉄筋沈下が単なる鉄筋下がり(重ね接手部の固定力不足)であっても、座屈とみなされれば、杭の打ち替えや増し打ち(フーチングの拡大を伴う)・工期の大幅遅延等で、座屈と同じ損害が発生します。  このことから鉄筋下がりと座屈の区別がしっかりされないと、鉄筋下がりも座屈に含めて考慮せざるを得ず、座屈対策の安全率も過大になります。   このことから、本来鉄筋下がりと座屈は全く別ものであるにもかかわらず、区別ができないと、現象と影響は同じであることからしっかりと区別をしなければなりませんが、誰が何を基準に判断するのかというところは不明なままです。

座屈対策だけでは不十分!

施工者は座屈事故を起こさないために、神経を遣いコストをかけて慎重に施工をします。  揚重機等の機材にも投資をしています。  杭長が30mを超えるあたりから施工が複数日に跨ぐようになり、24時間施工が出来ない場合のロスは大変なものです。 施工費も鉄筋重量や杭長と比例するように嵩みます。 サイクル時間を考えると放置されるべきではありません。  これらは3Kや新3Kの温床であり、長尺杭や重量杭で最も心配しなくてはならない座屈対策が技術提案に盛り込めず評価されない・施工の難易度とコストが請負費に反映されにくい状況の改善は急務であると考えます。

場所打ち杭鉄筋かごの無溶接工法 に関する研究についてhttps://dokumen.tips/documents/150616-oe-eecc-ecc.html?page=1

場所打ち杭の無溶接工法による鉄筋かごの課題と対応についてhttps://www.ejcm.or.jp/jcm/ronbun/24/pdf/24r-022.pdf

深礎工事における鉄筋組立ての安全性についてhttps://www.gifu.crcr.or.jp/kibanken/kenkyu/H16seika/h16shinnso.pdf

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